【第2話】姉の寝起き
今朝は父が炊事当番ということはテーブルに並べられたお皿を見ればすぐにわかる。父が当番のときは決まりきった同じものが用意されているからだ。
細かく刻んだ笹の葉とドッグフードを混ぜ、牛乳で仕上げたシンプルな朝ごはん。
犬と牛とパンダ混ぜたらほぼ人間だろ。
というのが父の言い分。一理あるのかも。
なぜタヌキではなく牛なのか、人間のみみたぶはどこから持ってくるのか、限られた数えるほどの問題点に思考を巡らせていると、パタパタと足音が近づき台所の扉が大げさに開いた。姉だ。
青ざめた顔をした彼女のもみあげには、昨日の晩御飯のひじきが絡まっていた。
「目覚まし時計代わりに、ゴーヤーを昨晩置いておいたのに起こしてくれなかった!なんなの?!」
朝食は中断。僕は席を立ち、ねぐせとひじきを軽快に揺らし喚き散らす姉に応じる。
「そんなの起きれるわけないじゃん。」
姉は頭にクエスチョンマークを並べ、困惑の表情を浮かべている。どうしてわかっていないのかなぁ、見つからないように小さくため息を吐く。
あっちへこっちへと弾んでいたひじきも落ち着きを取り戻し、彼女のもみあげには平穏が訪れていた。
姉からゴーヤーを受け取りまな板の上に静かに載せ、洗濯バサミで真っ二つに切る。気品溢れる切断面から赤色の種と淡黄色のわたがこれみよがしに顔を出した。
「見てよ。このゴーヤー熟れすぎだよ。」
洗濯バサミに付着したわたを拭い取りつつそう言うと、彼女はゴーヤーの種をおへそにはめ体いっぱいに笑った
「そっか!」
いつの間にやら彼女のもみあげには黒い花が添えられていた。